論説・随想(2004年 6月)


 駐車場日本一になった!                      

宮崎 真澄 (銀座パーキングセンター)  

『第1回日本ベストパーキング賞』の最優秀賞を受賞した我が「西銀座駐車場」を紹介させていただこう。
"窓口で切符切りでもやるのかな?" なんて思いながら、再就職した職場、(株)銀座パーキングセンターだが、数寄屋橋から新橋までの間570mを2階建で、昭和39年に作った810台収容の駐車場は、古いけれども予想外に大規模だった。 都庁に入って街づくりを担当したが、恥ずかしながらこんなところにこんな大きな駐車場があるとはツユ知らなかった。

  昭和39年、我々が学部移行して間もない頃の東京は、オリンピック一色だったわけだが、五輪開催に間に合わせるよう、建設大臣の特許事業として都心、特に銀座地区に大規模な駐車場が必要とのことで、新幹線や環状七号、首都高速などと共に突貫工事によって開催直前に開業させたものである。だから今年10月に創業40周年を迎える。近辺の大手企業が株主の純粋な民間会社だから「民活」のはしりである。東芝・ソニー・阪急百貨店・電通・新日鉄・資生堂・大成建設等20社余りが株主で、資本金は15億円である。

  昨夏、(社)東京駐車協会から「日本ベストパーキング賞」に応募しないか?との話があったが、当初「何じゃそれは?」という感じであった。聞けば国土交通省の外郭団体である(財)駐車場整備推進機構が15年度から創設した賞だという。道理で知らないわけだ。 「まあ、とにかく応募だけはしてみよう」ということで、私が応募原稿を全部書くことになり、最重要事項として取組んでいる耐震補強工事、ITによる自動化、バリアフリー対策などのほか、私が座長となって都内の大きい駐車場10社を集めて進めてきた駐車場案内標識の改善活動、銀座地区における様々な活動などを書き、締め切り近い10月上旬に提出した。

  審査委員は16名で東京海洋大学教授の高橋洋二委員長をはじめ、デザイナー、身障者団体、国交省、都、機構、東京駐車協会など多彩であり、審査も予想以上に真剣なものであった。 「どうせ事務局が順位を決めて、まあそんなもんだね」ってな感じで承認するのだろうとタカをくくっていたところ、そんなもんじゃなかった。全国から122社が応募し書類審査で39社が残った。その後、機構の常務理事など数名の委員が実地検査のためしかも抜き打ちで来社し、写真撮影や寸法測定、ヒアリングなどを行った。匿名での電話質問も3回ほどあったようで、係員の言葉遣いや応対のほか、身障者対応の状況なども尋ねられたらしい。この結果は1月に入って10社くらいに絞られ、当社も幸い残った。2月になって委員長自ら数名の審査委員が来社し2時間余にわたって再調査され、「もしかしたら!」との期待が高まった。

  かくて2月25日、正式に発表があり、最優秀賞2件、優秀賞5件、特別賞3件の計10件が受賞と決定された。最優秀賞の他の1件は、高崎市の「ウエストパーク1000」で、2001年に開業した7階建て、1000台収容の自走式駐車場である。県・市の全面出資によるデザイン性に優れた最新式のものであるから総合点が高いのは当然であり、40年を経てしかも地下にある我社の駐車場とは比ぶべくもないだろう。しかし、老朽化の進行が顕著な中にも、耐震工事や設備のリニューアルを積極的に行うなどの努力が高く評価された結果だということである。
  後日談であるが、数人の委員が「第1回から新式の駐車場だけが受賞するような賞では、今後、古くても様々な努力を続けている駐車場が応募できなくなるし、しなくなるだろう」と強く主張して全体の総意になったと聞いている。当社が受賞した喜びもさることながら、第2回目以降の本賞のためにも、よくぞと逆に審査委員を評価したい。

  3月17日、半蔵門の東条インペリアルパレス(旧東条会館)で行われた表彰式には社長と2人で出席し、会長であるトヨタの豊田章一郎さんから賞状・プレート・賞金などを受け取った。北海道では「タイムズステーション札幌S4−6」が特別賞を受賞したほか、九州2件、大阪、名古屋など全国的な受賞となった。
  「受賞」は一方で喜んでばかりはいられない。「なぁーんだよ、これが最優秀賞かよ」なんて言われないように、逆の意味で重荷になり、責任もかぶさってくる。だから受賞後も場内の美化や顧客へのサービス向上になお一層努めるよう社員の自覚を促している。

  耐震補強工事について一言触れると、「阪神淡路大震災」の教訓を生かすため、平成9年から10年計画で鉄骨による柱の補強を主に進めており、今年で8年目、ようやく先が少し見えてきたところだ。総事業費は約30億円、補助金がないため配当を半減してもらい、収入の漸減を全社挙げてのコストダウンでしのいでいる。私がクビになる(予定の)頃、全部竣工する計画だ。それまでは何とか頑張ろうと思っている。



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